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ピロリ菌について

日本は胃がんの多発国

かつては日本では男女とも胃がんの死亡率は第1位でした。やや減少傾向にあるものの現在でも毎年およそ5万人の方がこの病気でなくなっており依然として早期発見による完全治癒が望まれる放っておけば重篤な病気である事に変わりはありません。

世界的に見ると毎年100万人がこの病気と診断され、がん関連の死因としては第2位を占める病気となっています。胃がん死亡率は日本、モンゴル、中国、韓国などアジア諸国は高く欧米では低いことが知られています。

男性では臓器別で肺がんに次いで第2位、女性では大腸、肺に次いで3位とまだ高い死亡率を占めています。およそ人口10万人あたり50人位が胃がんで亡くなっています。

まだ、というのは今後は若い人が胃がんに罹る可能性は確実に減っていくとされているからです。なぜでしょう。
治療の進歩や診断技術の向上により早期発見が可能になったという理由も多少はありますが大きな理由は原因となる日本人のピロリ菌感染率が若い人では極端に低くなっているからです。50代以上では6~8割位の感染率ですが10~20代では2割程度です。

ピロリ菌と胃の病気

およそ20年程前私が学生か研修医の頃、大学病院の消化器病棟には胃潰瘍や十二指腸潰瘍の療養で入院する患者さんがまだ数多く見られました。その後効果の高い胃薬が数多く開発されてからは多くの潰瘍は外来での治療が可能となるようになりました。しかし治っても薬を中止すると潰瘍を再発してしまうケースが少なからずありました。

病棟回診などで「あなたは、仕事を辞めてストレスを減らさない限りは潰瘍は治らないよ」とか「タバコをやめない限り再発するから次は胃を切らなきゃダメだよ」などと医者からこの病気とは一生の付き合いだ、というふうに説明されている患者さんを何回もみたものです。しかし実際には仕事を辞めてもタバコを止めても潰瘍は再発を繰り返したのです。繰り返す最大の原因がピロリ菌の感染だったからです。

偉大な発見者にノーベル賞

1983年、オーストラリアのマーシャルとウォレンによりこの菌は発見されました。
その昔は胃のような酸の強い環境下に菌が生息しているという仮説は初め全く受け入れられませんでしたが、存在が証明された後はこの菌に関するおびただしい数の研究がなされ胃炎、胃十二指腸潰瘍との関連がどんどん解明されて来ました。そして菌を退治(除菌)する事により潰瘍はほぼ再発しない病気になったのです。

更に研究は進み、胃潰瘍十二指腸潰瘍だけでなくこれまで食生活や塩分摂取などの生活習慣が主な原因と考えられていた胃がんの最も重要な原因が実はピロリ菌である事が明らかとなりました。菌の発見から10年、世界保健機構に胃癌の最大の原因物質として認定されたのです。2005年、発見した功績を評価されマーシャルとウォレンはノーベル医学生理学賞を受賞しました。

ピロリの感染 いつ感染するの?

ピロリ菌は成人になって初めて感染するという事は通常は多くはありません。
感染経路は完全には解明されていませんが、上下水道設備が整っていないなど不衛生な環境が感染の原因と考えられています。現在若い年齢層で感染率が低くなっているのは衛生環境が整備されてきたからだと言われています。発展途上国では依然として若い人の感染率が高い国も少なくありません。

胃の中にピロリ菌の持続的な感染が成立するには菌が胃に定着しなければなりません。成人では免疫防御機構が働くためピロリ菌がある程度の量が入ってきても自然に免疫力で退治したり一過性の胃炎で終わりその後の持続的な感染はふつう成立しません。
ところが免疫がまだ完全でない0才から12才頃、遅くとも15才くらいまでに菌の暴露を受けると、菌を排除する事が出来ず定着してしまい持続感染に繋がると考えられます。追跡調査で15才以上で菌の保菌率が上昇しない事などがその裏付けとなっています。

ピロリ菌はどのように病気をおこすのか

ピロリ菌がいる胃では20から30代くらいから内視鏡でも見た目にわかるような胃炎が生じてきます。しかし個々により程度は様々で全く見た目で区別がつかないくらいきれいな粘膜のこともあります。
ピロリ菌は強い胃酸の環境下で自分を守り殺菌されない仕組みを持っています。菌が持つウレアーゼという酵素により胃の中の尿素からアルカリ性のアンモニアを作りだし胃酸を中和して住みやすい環境を作っているのです。まるで身の周りをバリアで固めているイメージです。

粘膜に定着したピロリ菌は様々な酵素や分泌物を作り粘膜傷害や胃炎をおこします。胃炎が何年もかけて続くと特徴的な萎縮性胃炎という状態となっていきます。カメラで観察すると胃粘膜が薄く白っぽくなり、赤い胃炎も同時にみられます。さらに進むと健康な胃にみられる襞がなくなり見た目ツルツルの胃袋になっていきます。ここまでくるとピロリ菌の活動の場もなくなり自然と菌がいなくなってしまっている事がありますが、この状態こそ最も胃がんに気をつけなければいけない状態なのです。このような患者さんを詳しくみてみると年間80人に1人位の割合でがんが発見されますので胃がんの発生母地の高リスクの胃となります。

胃がんの発生はどのくらい?

ピロリ菌がいると全員に胃がんができるわけではありません。萎縮の程度や年齢によっても異なりますが10年間での胃がんの発生率はピロリ菌のいる方でおよそ3%、いない方でほぼ0%といわれています。つまり日本人の胃がんの99%はピロリ菌がいる人から起こるのです。

がんができる人できない人の違いですが、ピロリ菌自体のタイプの違いによるものなのか、食事や喫煙が原因なのか、ヒト側のもつ因子なのか、それとも複合的なものなのか、完全にメカニズムが解明させるには至っていません。

ピロリ菌の除菌について

ピロリ菌は現在、かなり高い確率で一度の治療で退治できるようになりました。これを除菌治療といいます。保険診療で使える薬は決められており、胃酸を抑える薬と抗生物質の組み合わせで数種類の薬を7日間毎日内服します。一度目の治療で除菌が成功する割合は90%から95%となっています。残念ながら除菌できなかった方も薬の内容を変えてもう一回までは保険診療で行う事が可能です。

効果判定

通常、除菌治療後2ヶ月程したところで成功したかどうかの効果判定テストをします。胃カメラや血液検査を用いない呼気テストという簡単な検査でわかります。

メリット・デメリット

除菌成功により様々なメリットが期待できます。潰瘍の発生や再発を抑えたる事、胃炎の症状がある方は改善がみられる事もそうですが1番は将来のがんのリスクを減らす事でしょう。除菌後に胃がん発生のリスクはおよそ3分の1程度になるといったデータもありますが、では年齢的に何歳まで除菌は有用かということに決まった見解は得られていません。より胃のダメージ蓄積の少ない若い年齢で除菌を行ったほうが良いだろうと予測されますが臨床的には他のメリットを考え高齢者でも除菌治療を行うことも少なくありません。

デメリットにもきちんと目を向ける必要があります。最も大きなものは薬の副作用でしょう。内服開始後、悪心、軟便、下痢、味覚障害、口内炎、アレルギー反応などの副作用がでることがあります。ほとんどは軽い症状で内服を中止する事はそれほど多くありませんが、このような副作用は全体で約10%にでるとみられます。また除菌後しばらくして一時的に胃酸過多のような症状を訴える方も時々みられます。

潰瘍がなく症状のない慢性胃炎の患者へ保険適応が拡大され除菌治療が大体的に行なわれるようになってまだ5年足らずです。本当の意味でのメリットやデメリットが明らかになるにはまだ調査の結果を待たねばなりません。

治療についてはよく医師と相談した上で受けるかどうか判断される事をお勧めします。

ピロリ菌を調べたい場合どうしたらよいですか?

検査方法は大きく4つ、血液検査による抗体法、呼気テスト、便または尿中抗原検査、組織検査(迅速法と鏡検法)があります。
簡便性や確実性から検診では抗体法、効果判定では呼気テストがよく用いられます。

保険診療ではピロリ菌の存在がすでに検診で判っている方や、胃に関する症状がある方が対象となります。胃カメラを受ける事が必須となります。これは胃の状態を正しく判定する事や既にできているかもしれない胃がんを見落とさないためです。

クリニックでは現在の症状や過去の検査歴などを詳しくお聞きして除菌治療まで行うが可能です。薬のアレルギー歴がお有りの方は薬手帳などをお持ちになって頂くのが宜しいかと思われます。
お気軽にご相談下さい。